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社会・文化

コロナ「動物感染」に潜む難題

終わりなき「変異株出現」の原因

2023年2月号

 世界ではコロナを人畜共通の感染症と認識し、ペット、家畜、野生動物も含めて、総合的に対策を講じようとしている。コロナ対策を論ずるには、人間の社会活動に限定せず、もっと広い視野が必要だ。世界が注目するのは「ワンヘルス」である。ヒト、動物、生態系、この三つを一つのものと考え、守っていこうとする概念だ。しかし、日本では、このような議論は皆無に等しい。体制の抜本的な見直しが必要な時期に来ている。
 そもそもコロナは、野生のコウモリ由来のウイルスが、直接あるいはネズミなどの齧歯類などを介して間接的にヒトに感染したものだとされる。ヒト以外の動物に感染するのは当然だ。コロナは、宿主の細胞膜表面に存在するACE2と呼ばれる受容体とウイルス表面のスパイク蛋白が結合することで、宿主動物に感染する。哺乳類、特に肉食動物では、ACE2がスパイク蛋白と結合する部位が、動物の種類を問わず保存されているため、異なる動物間で感染が拡大してもおかしくない。
 ヒトと接点が多い動物のペットにヒトのコロナがうつるかは、流行当初から専門家の関心を集めた。二〇二〇年九月には、イタリアの研究チームが、飼い主か・・・