二〇二三年に入り、欧州連合（ＥＵ）が中国への対抗戦略に本腰を入れつつある。年明けの一月十日には北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）との間で、ウクライナ侵攻を続けるロシアと共に中国を「安全保障上の脅威」とみなした共同宣言に署名。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するインフラ支援計画「グローバル・ゲートウェイ」についても、具体化に向けた動きを加速する見込みだ。ただ、欧州各国には対中戦略を巡る温度差が依然あり、中国がそこに付け込もうとする構図は相変わらずだ。それどころか、各国のまとめ役となるべきＥＵ自体が、その外交戦略に翻弄されかねない―、そんな懸念を強く抱かせたのが、シャルル・ミシェル欧州理事会常任議長（ＥＵ大統領）による昨年十二月の訪中だった。
　ミシェル氏が北京を訪れ、習近平国家主席と会談したのは十二月一日。十月の中国共産党大会を経て三期目の新体制を発足させた習氏に対し、ＥＵ首脳の姿勢を示す初めての機会となった。だが、ＥＵ側の成果は乏しく、ミシェル氏は「ほとんど手ぶら」（仏紙ル・モンド）で帰路についた。
　もっとも当初からＥＵ関係者の期待は低かった。同氏の関心が対中政・・・