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連載

をんな千一夜 第70話

羽仁 もと子 教育の理想を追い求めて
石井 妙子

2023年1月号

 新しい年の始まりを寿ぎたい。
 昨年は元首相が公衆の面前で射殺されるというショッキングな出来事があり、秋から始まった国会では「宗教」問題一色となった。オリンピックをめぐる汚職の疑惑も晴らされず、現職閣僚が次々と更迭される事態を目の当たりとしながら迎えた新年。補助金をめぐる高級官僚の不祥事も続いた。更迭された閣僚たちはいずれも立派な学歴の持ち主だった。学歴に比例する教養、教養に裏打ちされた人間性がそこにあるならば、学歴にひれ伏しもしよう。だが、昨今の現状を見れば日本の教育になにか根本的な陥穽があるとしか思えない。学校でのいじめに起因する少年少女の自殺、家庭内での身内による殺人や傷害の多発。防衛費を増額しても国が内から崩壊してしまうことは防ぎようがないのだろう。そんな思いを抱えながら、年の瀬に羽仁もと子の著作を読み返した。
 女性ジャーナリストの草分けであり、思想家、教育者として知られる羽仁もと子。新聞記者を経て雑誌『家庭之友』(現在の『婦人之友』の前身)を立ち上げ、その後、自らの思想に基づく理想の学校を、との思いから今も東京都東久留米市に存続する自由学園を創立した女・・・