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経済

トヨタ章男「賃上げ発言」の二枚舌

下請け・販売店の「薄給」は続く

2023年1月号

 またも豊田章男社長の「暴論」が飛び出した。問題の発言があったのは二〇二二年十一月十七日の日本自動車工業会の定例会見。自工会の会長として出席した豊田氏は二三年春闘についての質問に「自動車・部品産業は家計に年間約一兆三千五百億円を分配している。二〇〇九年以降の年間賃上げ率は約二・二%と、全産業平均(約二%)を上回っている」と胸をはった。トヨタ自動車をはじめとする自動車業界が、賃上げで社会に貢献していると言いたかったのだろう。
 しかし果たしてこの言い分は正しいのか。トヨタは市場原理を無視してディーラーや下請けに負担をかけ、結果的に給与水準の引き上げのブレーキになっている疑念さえあるのだ。
 自工会の会見で豊田氏はこう続けている。
「(賃上げの)流れに組み込まれているのは(自動車業界の)約三割であって、残りの七割近くが話し合いの場にすら立てていない」
 この三割というのは労働組合加入者の割合。豊田氏は経団連と連合の春闘についても「約八割が話し合いに入れていない」と指摘した。労組加入率を上げたいかのような言説だが真意は別にあった。
 豊田氏は・・・