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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》宗教法人「解散請求」

政治が腐らせた「抜かずの宝刀」

2022年11月号

 政教分離には「separation of church and state(教会=宗教団体=と国家の分離)」というように、「宗教団体の国政乗っ取り」と「国家による宗教団体弾圧」を防ぐ二方向があり、各国がそれぞれの歴史を背景に細心の注意をもって取り組む課題だ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題で揺れる日本で明確になったのは、戦前の新興宗教弾圧の反動で「触らぬ神に祟りなし」と細心の注意を怠り、優遇措置を受ける宗教法人を「触れぬ神」にした宗務行政の貧弱さと、政治の無作為である。
 七月八日に安倍晋三元首相が殺害された後、犯行の動機から旧統一教会と自民党の関係が徐々に問題視され、内閣支持率の下落が止まらなくなった十月、岸田文雄首相は宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」の行使に初めて踏み切る考えを示した。起死回生を狙った決断に、自民党内には「質問権の先には解散請求を睨んでいるはずだが、司法が請求を認めなければ逆に旧統一教会にお墨付きを与えたことになり、世論が一層反発する」と懸念する声も強い。
 裁判所による解散命令の要件について宗教法人法第八十一条第一項一号は「法令・・・