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連載

皇室の風 第171話

天皇家の執事Ⅸ
岩井 克己

2022年11月号

雅子のキャリアや、そのことにもとづく雅子の人格を否定するような動きがあった」
 平成十六(二〇〇四)年五月の皇太子(現天皇)のいわゆる「人格否定」発言は、令和の皇室の一丁目一番地だと改めて思い始めている。
 詳しい説明のないまま「温かく見守ってほしい」とされてきた雅子皇后の「適応障害」(医師団)は今年十二月には二十年目に入るが、治癒の兆しはない。コロナ明け後の皇室が平成流の積極的象徴の継承を目指すのか、それとも東宮時代の“機能不全”がなし崩しで常態化して、昭和・平成と継承されてきた戦後の皇室の基本スタンスが根幹的改変に向かうのか。「パズルの隠されたピース」ともいうべき「人格否定」発言と、その背景の検証を踏まえねば今の皇室の危機と、その行方を論じることは難しいと思い至るのである。
 故渡邉允元侍従長の録音対談は平成二十一年から二十六年まで五回行った。立場上、慎重に言葉を選びながらも、皇室の現状と将来への懸念は隠せず、心配は今年二月に死去するまで晴れなかった。

       ◇

岩井:これまで・・・