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社会・文化

團十郎「襲名ビジネス」の皮算用

梨園と松竹に飛び交うカネ

2022年11月号

 江戸歌舞伎のシンボルとも言うべき大名跡「團十郎」が九年ぶりに満を持して復活する。新型コロナで苦しんだ梨園は、にわかに祝福ムードに包まれ、景気のいい話も聞こえてくる。しかし喜んでばかりもいられない状況だという。
 十月二十二日、市川海老蔵は同時に新之助を襲名する長男の堀越勸玄、長女の市川ぼたんらとともに、千葉県成田市の成田山新勝寺を参拝した。
 江戸時代、十七世紀に人気を博した初代、市川團十郎の父が成田山近くの出身だった。跡取りに恵まれなかった團十郎が成田山に祈願をすると、翌年には二代目が生まれた。これが、現在まで連なる市川宗家の大元となる。
 初代はその後、成田山ゆかりの演目を繰り返し上演し報恩したといい、その際に大向こうからかけられた「成田屋」という掛け声が、歌舞伎界における「屋号」の始まりである。
 海老蔵としては最後の成田山詣で。次に来るときは、「十三代目市川團十郎白猿」を名乗っている。「白猿」は五代目が使った俳号で父や祖父といった先代たちには敵わないことを表している。当代も、その謙虚さを見習ったようだ。

「協賛企業」から團十郎へ・・・