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社会・文化

世界が注目 「糞便療法」の研究

「がん治療」への応用に期待大

2022年11月号

 人の糞便、つまりウンチでがんを治療する研究が注目を集めている。健常人や病気を克服した人の糞便から採取した腸内微生物を患者に投与すると、がん細胞が縮小するというのだ。医学が進歩し、腸内に常在する微生物が様々な病気に関わっていることが分かってきている。乳酸菌飲料が体によいというのは身近な例である。この腸内微生物を利用したのが「糞便療法」である。いま、この療法の研究・開発が加速しつつある。
 世界が腸内微生物に関心をもったのは、二〇〇六年十二月に米ワシントン大学の研究チームが『ネイチャー』誌に発表した研究がきっかけだ。腸内には様々な微生物が存在し、腸内微生物叢を構成する。彼らは痩せているマウスに、太ったマウスの腸内微生物叢を移植した。すると、体重が増えることを示し、腸内微生物が宿主の代謝に影響することを証明した。ちょうどこの時期、ゲノム工学が進歩し、従来の培養法では検出できなかった腸内微生物の同定や分析が可能となった。腸内微生物叢と病気に関する研究が始まった。

がん免疫療法の効果を高める

 現在、最も研・・・