三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

比マルコス二世「独裁者」の馬脚

父譲り「強権と驕奢」が早くも露呈

2022年11月号

 フィリピンの独裁者、故マルコス元大統領を父に持つフェルディナンド・マルコスが大統領に就任してから四カ月。支持率は高く、台頭する中国を念頭に、米国をはじめとする西側諸国はフィリピンとの関係改善を急ぐ。大統領は国連総会での演説で人権を尊重する姿勢をアピールしてみせたが、足元では政権に批判的なジャーナリストが殺害され、危険な兆候も出始めている。
「私がここにいるのは過去ではなく、私たちの未来について話すためだ。後ろを振り返るのではなく、前を向こう」
 六月三十日にマニラの国立美術博物館で開かれた就任式。赤い絨毯を歩き、演台に立ったマルコスは力強く語った。一言ごとに聴衆から拍手と歓声が沸き上がった。
 選挙期間中は政策論争を避けてきたマルコスだったが、就任後は新型コロナウイルスの感染拡大によって傷んだ経済の復興や食料自給率の向上など生活に直結する課題に優先して取り組む姿勢を示す。「任期が終わるまでに全国民を中間所得層に引き上げる」と意欲的な目標を掲げた。
 フィリピンの民間調査団体「パルス・アジア」が九月十七日から二十一日にかけて実施した世論調査でマル・・・