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イランで「民族紛争」の予兆

腐敗と暴政「反ペルシャ」が噴出

2022年11月号

 二十二歳のクルド系女性の死に端を発するイランの騒乱が、同国を構成する少数民族地域全体に拡大している。イラン当局は力で抑え込もうと、デモ隊に実弾を発射して弾圧しているが、剥き出しの暴力がさらに憎悪や抗議を拡大するという悪循環に陥っている。
 多民族国家のイランでは、人口最大のペルシャ系による力の統治が続いてきた。国のざっと半分が非ペルシャ系の少数民族だ。各地の反政府・反ペルシャ系闘争は今後、さらに激化する可能性が高く、イランの神権政治体制は重大な危機を迎えた。

「血の金曜日事件」の惨劇

 まずイラン各地で今、起きていることを紹介しよう。
 九月三十日の白昼、シスタン・バルチスタン州(以下バルチスタン)の州都ザヘダン。
 金曜礼拝を終えた人々が抗議のため、市の警察署に向かおうとしたところで、激しい銃声が鳴り響いた。目撃者によると、治安部隊が警察署の屋根や周辺に陣取り、デモ隊の到来を待ち受けていた。
 行進が射程に入ったところで、一斉射撃が始まった。生存者は「映画でしか見た・・・