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「クレムリン内紛」という猿芝居

窮地のプーチンが「情報攪乱」

2022年11月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の周辺で、「大統領より強硬」とされるタカ派が発言力を強めている。民間軍事会社「ワグネル・グループ」は十月下旬、ウクライナの前線で、ロシア軍と離れて独自行動をとり始めた。
 あたかもプーチン政権内の分裂が表面化しているように見えるが、西側軍事筋の間では「軍事的に劣勢のロシアが、時間稼ぎのために擬装工作を強めている」との分析がある。ウクライナ政府と米政府は当面、ロシア側から「休戦」や「交渉」の申し出があっても応じない方針だ。
 前線のワグネル部隊が突如、「ワグネル・ライン」を宣伝し始めたのは十月半ばのことだ。単に地図上に線を引くだけでなく、コンクリート製の三角錐を荒野に二列に並べて、物理的な「ライン」を引いていった。「これで敵の戦車は通れなくなる」とPRした。
 ワグネル部隊の創設者であるエフゲニー・プリゴジンは、この動きに合わせてSNSでの発信を増やし、「ロシアの官僚主義」を激しく攻撃した。
「官僚たちはロシア人民の敵だ」「ロシア人民を守ることを何も考えていない」などとして、ワグネル部隊が正規軍に代わって防衛線・・・