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経済

量子コンピューターの「暗部」

またぞろ「甘利案件」で渦巻く我欲

2022年10月号

 もはや両者に十三年前の結束はみられない。同志の信頼は千々に砕けたということか。
「世界一になる理由は何でしょうか。二位じゃ駄目なんですか」
 民主党政権下の行政刷新会議―。振り返れば、仕分け人の同党参議院議員・蓮舫が、次世代スーパーコンピューター「京」の開発に異議を唱えたのは二〇〇九年十一月のことだった。
 京は当時、文部科学省所管の理化学研究所と富士通が共同開発していた、予算一千億円超の国家プロジェクト。鼻白んだ蓮舫のひと言で予算凍結が決まったが、これに政財学の各界から強い反発の声が上がった。とりわけノーベル化学賞受賞者の当時の理研理事長・野依良治は「先進各国がしのぎを削るスパコンの開発を一旦凍結すれば、他国に追い抜かれる」と民主党の不見識を訴えていた。
 幸い予算は復活したが、ここから“血税冗費”の批判を逆バネにした開発者の奮闘が始まる。一一年六月、京はスパコン性能の世界ランキング「TOP500」で見事一位を獲得、七年ぶりの国産機の返り咲きだった。京の後継機「富岳」の開発も進み、二〇年六月から翌年十一月まで一位を堅持・・・