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WORLD

国際環境団体を籠絡する中国

「親中世論工作」で新たな標的

2022年10月号

 習近平国家主席率いる中国が、世界の環境保護運動を新たなリクルート対象と位置づけ、「中国シンパ」作りに邁進している。
 中国共産党は歴史的に、世界中の左派勢力を潜在的な味方ととらえ、活発に「統一戦線」作りを働き掛けてきた。各国の環境運動に近づく狙いはもちろん、中国に厳しい世界の世論を和らげ、中国主導の環境運動を作ることだ。
 中国の狙いが表れたのは、昨年十月の「国連生物多様性条約第十五回締約国会議(CBD COP15)」だった。雲南省の省都昆明市が会場で、パンダを筆頭に中国の野生動物を扱った、派手な宣伝で溢れた。新型コロナウイルスの感染対策のため、会議は結論まで至らなかったが、「環境大国・中国」のアピールは目を引いた。
 読者は「環境大国・中国」という看板に違和感を覚えるだろう。中国は、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)排出量で、断トツの世界一だ。二〇一九年の統計では、二位の米国のざっと二倍の九十八億トンのCO2を排出した。五位の日本の十倍に近かった。
 さらに急速な工業化によるひずみ、都市部の大気汚染、水質汚染など、日本が一九六〇~七〇・・・