古代文明を育んだ地中海が、世界で最も深刻な温暖化に襲われている。海水温の上昇は世界最速ペースで、地球の海洋全体よりも二〇％も早く進んでいる。今年はイタリア沖などで三十度を記録するなど、海水面の温度が例年より四～五度高くなり、各国政府や気候・気象専門家を震え上がらせた。
　海水温上昇で、以前には生息しなかった熱帯・亜熱帯の海洋生物が続々と地中海に押し寄せる。
　さらに深刻なのは、海水温上昇が、地中海を囲む国々を中心に深刻な熱波、干ばつをもたらしていることだ。今年の夏は、西欧各国で熱波や干ばつ、集中豪雨が相次いだ。欧州と中東、北アフリカの人々は、最悪の形で地球温暖化を体感することになってしまった。

熱帯魚が続々と地中海に襲来

　日本でカサゴと言えば、美味の魚として知られる。欧州の地中海沿岸諸国では今、恐怖の的だ。堂々たる姿のミノカサゴが、クロアチアやイタリアの海辺で頻繁に見られるようになった。姿形が恐ろしい上に、毒も持っている。
「味は絶品だから、獲れるだけ獲って、食べつくしてしま・・・