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経済

《地方金融の研究》中日信用金庫(愛知県)

「ゼロゼロ融資」で悪行三昧

2022年8月号

 金融関係者の間からは「氷山の一角では」といった反応も漏れる。
 通常より高い利息収入が転がり込んでくるうえ万一、融資が焦げ付いても最終的には国が尻拭いしてくれる―となれば「モラルハザードが起こらない方がむしろ不思議なくらい」(メガバンク筋)だろう。新型コロナウイルス禍で業績が落ち込んだ中小企業などの資金繰りを支援する国の実質無利子・無担保融資制度。いわゆる「ゼロゼロ融資」で今年七月、不正行為が発覚した。
 舞台となったのは名古屋市に本店を置く中日信用金庫。三月末時点で貸出金残高一千七百九十二億円の中堅信金で、職員らが取引先の業績を改竄して手続きを進め、融資を実行していた事案が複数見つかったとされる。内部調査が「まだ半数ほどしか終わっていない」(関係者)ため具体的な件数や金額は明らかにしていないが、中日信金のゼロゼロ融資件数は三千七百三十五件。残高は貸出金全体の三割を超える五百四十三億円にものぼっている。
 ゼロゼロ融資はコロナ禍で直近一カ月間の売上が一五~二〇%減少した企業などに対し三年間実質無利子、保証料ゼロかつ無担保で運転資金などを貸し出す制度だ。元・・・