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社会・文化

安倍銃撃「孤立と暴力」という病理

「一匹狼犯罪」各国で進む研究・対策

2022年8月号

 自宅で一人密造した銃が、元首相の命を奪った。四十一歳の単独犯、「ローンウルフ」(一匹狼)による犯行。メディアでは警備体制の不備がクローズアップされている。事件の背景として、安倍晋三氏とかかわりがあったとされる宗教団体への、この男の怨恨が詳細に報じられている。だが、この事件には見過ごされがちな、注目すべき視点がある。容疑者が抱えていただろう「孤立」である。
 孤立した人が暴力性を増すことは、古くから知られている。一九三八年、米国の精神科医グレゴリー・ジルボーグは『孤独』という著書の中で、「孤独な人間は敵対的で好戦的になる」と記している。孤立と暴力については、学術研究だけでなく、繰り返し文学作品や映画でも取り上げられている。
 最近、この問題を取り扱った作品として有名なのは、二〇一九年にヒットした米国映画『ジョーカー』だ。主人公アーサーは、一流のコメディアンを目指し修業中だったが、周囲から迫害され、仕事を失う。地下鉄で絡まれている女性を救おうとして偶発的に殺人を犯し、悪の世界に堕ちていく。バットマンのライバルである「ジョーカー」の誕生だ。
 孤立と暴力に関す・・・