三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

デジタル庁で続く「危機的迷走」

「IT利権」の膨張と争奪戦

2022年8月号

 NTTは、デジタル庁へ冷笑を送っているに違いない。
「やれるものならやってみろ」
 ガバメントクラウド―。同庁が二〇二五年度末の運用を目指す一大ITプロジェクトが暗礁に乗り上げている。中央省庁と地方自治体を連携する行政DX(デジタル変革)の中核のシステム基盤だが、連携は遅々として進まず、全国のソフト開発会社の団体、情報サービス産業協会(JISA)は二五年度の運用開始に異議を唱えた。にもかかわらず、六月七日、閣議決定された同庁の「重点計画」にこんな一文が載ったのだ。
〈国自ら既設の全国広域通信網を活用して直接管理する独自の回線網を二二年度から運用できるよう整備を進め、その後、本格的運用に移行する〉
 意味するところは、デジタル庁が“霞が関の通信会社”になるということである。中央省庁には、すでにNTTの光通信サービスを利用した「政府共通ネットワーク」がある。が、重点計画はそれを廃止し、光回線、集線装置、帯域管理のコントロールセンターに至るまで自営設備を保有することを謳っているのだ。その構築費、技術者を含む運営費は果たしていく・・・