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政治

岸田は憲法改正をやれない

「安倍の遺志」右派をどう鎮めるか

2022年8月号

 国内のみならず、海外メディアまで「憲法改正近し」と騒ぐのは、七月十日投開票の参議院議員選挙の結果、「改憲勢力」が衆参両議院で憲法改正の発議に必要な三分の二以上の議席を持っただけでなく、改憲が悲願だった元総理大臣・安倍晋三の死が機運を高めると見るからだ。この状況は総理大臣・岸田文雄の「早期に発議」という言葉に信憑性を与えた分、空騒ぎで終わった時には政権が吹き飛ぶ「地雷」を内包している。
 自由民主党のハト派の牙城である派閥・宏池会を率いる岸田の憲法改正に対する「本気度」を疑う声はもともと強かった。安倍のように自分の主張を唱えるのではなく、よく言えば柔軟、悪く言えば芯のない状況対応的な手法という面でも、岸田のもとでの憲法改正には否定的な見方が多かった。
 しかし、安倍の死は、ただでさえ絶滅危惧種になりつつある自民党内の護憲派が口を開きにくくなる雰囲気をもたらし、岸田の安倍に対する友愛は、憲法改正で報いたいとの感情的な動機も与えた。参議院選の主要争点としてメディアが取り上げた政策課題の中では脇にあった憲法改正が、選挙が終わってからど真ん中のテーマとして扱われるようになっ・・・