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WORLD

中露の手に落ちる「コーカサス」

「制裁破り」で潤う危うい国々

2022年8月号

 長期化するウクライナ侵攻の裏で、ロシアが浸透を図っている地域がある。アジアとヨーロッパの結節点となるコーカサスだ。欧米による経済制裁を回避するため、ロシアからヒトとマネーが流入する。東西の物流ハブとしても急浮上しており、中国の触手も伸びる。
 世界各国の通貨が対ドルで軒並み下落するなかで、人口四百万の小国、ジョージアの通貨ラリが三月から三〇%近く上昇している。
 ジョージア政府高官によれば、ロシアがウクライナ侵攻を開始した二月二十四日からジョージアに移住したロシア人は七万人超。非政府機関(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルの調べでは、この数カ月で一千二百件のロシア人のビジネスが立ち上がったとの報道もある。首都トビリシの不動産価格は二~三倍に高騰しているという。
 ジョージアでは、国民の八割が欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)への統合を支持する。そんな親欧米志向に対して、ロシアは二〇〇八年にジョージアに侵攻し、国土の二割に当たるアブハジアと南オセチアという二地域を事実上占領した。にもかかわらず、ジョージア政府は今回のウクライナ侵攻・・・