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欧州「気候正義」という欺瞞

EU官僚「独善」に怒れる貧者

2022年8月号

「フィット・フォー・55」。欧州連合(EU)が掲げる気候変動対策の基本計画だ。二〇三〇年までに温室効果ガス排出量の五五%削減(一九九〇年比)を目指す。この野心的な目標のもと、EUは「気候正義」の旗を振る。だが、その「正義」が社会分断を促しかねない。削減目標達成のため、ウクライナ戦争で燃料費高騰にあえぐ低所得者らが「犠牲」となる恐れが出ているためだ。
 各加盟国によるEU理事会は六月二十九日、ルクセンブルクで開いた環境担当相会合で、フィット・フォー・55を巡る主要法案についての基本方針で合意した。「EUは気候変動との戦いをさらにけん引することになる」。議長国フランスのパニエ=リュナシェ・エネルギー移行相は、合意後の記者会見で高らかに言った。しかし、欧州議員や環境保護団体からはその内容に、「低所得者層の反発による社会不安を引き起こす」「一般家庭に(気候変動対策の)つけを回すことになる」などとする批判が相次ぐ。

「社会的不平等を拡大」との警告

 物議を醸しているのは、温室効果ガスの排出量取引制度(ETS)・・・