洋上風力は「利権と不正」の巣窟に
入札ルール「改悪」の全内幕
2022年7月号公開
不用意な発言の誹りは、主務大臣として免れないだろう。
「いろいろな(落札者の)仕組みを見てみたかった」
一月七日、経済産業相・萩生田光一の年明け最初の記者会見―。振り返れば、このひと言がルール改悪の根拠になったと言っていい。萩生田は、三菱商事を主体とする企業連合が独占した洋上風力発電の三海域の入札結果に“遺憾”の意を表明したのだ。さらに「他の事業者も参加しやすい仕組みを検討したい」と口を滑らせた。予兆はあった。
“三菱商事ショック”―。昨年十二月二十四日に発表された入札結果は、こう慨嘆されるほど衝撃的だった。同社の落札価格は一キロワット時当たり十一・九九~十六・四九円と他社の追随を許さない安値であり、失注した日本風力開発、レノバなどの風力ベンチャーは「ダンピング応札だ!」と三菱商事批判の気炎を上げていた。彼らが頼ったのは前首相の菅義偉、二〇五〇年に向けたカーボンニュートラルの宣言者である。
「おかしいんじゃねぇか」
菅は、入札結果の報告にきた経産省の資源エネルギー庁長官・保坂伸の説明に納得せず、長時間にわたり非難の〝雪隠詰め〟に遭わせている。その菅が官房長官だった安倍晋三政権時代、副長官として仕え、信任が厚かった萩生田が入札結果を歓迎するわけがない。
経産省は三月、国土交通省と連携し、入札の審査基準を見直す有識者会議を立ち上げた。慌ただしく五月二十三日にまとまった見直し案は、あからさまな三菱商事外し、すなわち価格競争の形骸化である。しかも、経産・国交の両省は審査基準の見直しを理由に、公募中だった秋田県八峰町・能代市沖の案件の入札を延期したのだ。
萩生田の不用意発言に端を発するこうした事態は、欧米の風力発電事業者や風車メーカーにどう映るか―。制度リスクの高い日本市場を嫌気されるどころか、風況や海底地盤の調査費の損害を訴え、国家賠償訴訟を起こされても不思議はない。しかし、ある電力関係者はこう囁く。
「すべては七月の参議院選挙にかかっている。その結果次第でまさしく風向きは変わるだろう」
酒とカネのばら撒き合戦に
では、審査基準の見直し案はどこが改悪なのか、子細にみていこう。論点は審査の配点に関わる①運転開始の迅速性、②最高評価点価格の導入、さらに③同一事業者による落札海域の制限に大別されるが、当初、見直しの契機となったのは運転開始の時期だった。
「三菱商事の落札案件は二〇三〇年に間に合うのか」
河野太郎、小泉進次郎、柴山昌彦ら、菅に連なる自民党の環境派議員はこう鼻白んでいた。
再生可能エネルギーの切り札と期待される洋上風力は、三〇年までに一千万キロワット、四〇年には三千万~四千五百万キロワットの導入目標が掲げられている。その第一弾である三海域の入札を三菱商事が独占したため、運転開始の遅延の怖れを指摘されたのだ。計画では三海域とも三〇年末までに稼働するが、三菱商事に敗れた応札者の中には二七年の稼働計画もあったことから、「政府目標に資する早期運転開始を重視すべ
きだ」という声が高まった。
この結果、運転開始の迅速性には二十点が重点配点される。審査は迅速性を含む「事業実現性」と「応札価格」、ふたつの評価をそれぞれ百二十満点とし、合計の獲得点数で落札を競わせているが、迅速性の比重が高まれば、いち早く地元対策に着手した者が有利になる。一方、応札価格の評価には最高評価点価格が導入される。これは事実上の応札の下限価格だ。
例えば最高評価点価格を一キロワット時当たり十五円と設定したとしよう。それより安い札を入れた者には一律に百二十満点が評価され、仮に八円、十円、十二円と応札価格に優劣があっても獲得点数は変わらない。つまり、価格競争は下限価格で無効にされてしまうのだ。さらに落札者には最大百万キロワットの制限もつく。落札した案件の発電出力がこれを超えた場合、その事業者は他の海域に応札できない。
見直し案は、風力ベンチャー優遇と受け止められても仕方ないだろう。なぜなら、第二弾の入札の有望海域である八峰町・能代市沖では日本風力開発、同じく千葉県いすみ市沖ではレノバが先行しているからだ。価格競争力に勝る三菱商事を最高評価点価格や落札海域制限で排除できれば、彼らの落札が視野に入ってくる。
さすがに運転開始の迅速性の重点配点には、東京電力ホールディングス(HD)、同社と中部電力の燃料・火力発電会社であるJERA、住友商事が異議を唱えた。
「今後、ボーリング調査の先陣争いが始まるだろう。その同意を得るため、地元に酒(接待)とカネ(地域振興)を多くバラ撒いた者が勝つことになる」
第二弾、第三弾の入札は漁協や自治体に事業者が入り乱れる混戦が必至だが、しかし、それは経産省が推進するセントラル方式に逆行するのだ。
参院選で菅の協力を得るため
セントラル方式とは、国が風況や海底地盤の調査を行い、電力系統の連系も確保し、それらのデータを応札者へ提供する事前調整を指す。同方式が普及する欧州では国がワンストップで地元と交渉するため、応札者は風車建設の効率化に専念できる。しかし、運転開始の迅速性を競うことになれば、抜け駆けの地元対策が横行し、入札が利権化するのは自明だ。
三菱商事外しとみられる落札海域制限も機能するとは思えない。同社は中電の子会社と企業連合を組んでいるが、仮に八峰町・能代市沖の案件を落札した場合、中電の関係会社であるJERAまで他の海域の応札を禁じられるのか―。そんな過剰規制はあり得ず、おそらくJERAは制限の対象外だろう。ならば、三菱商事も千代田化工建設や三菱商事エネルギーなど他の関係会社を主体に企業連合を組めばよく、いくらでも応札の余地はある。
つまり、審査基準の見直し案は制度設計の矛盾や杜撰さが目立つのだ。しかも、慌ただしく作業を進めた割に原案が固まるのは九月。パブリックコメントを経て、新基準が最終決定されるのは十二月であり、それに基づく第二弾の入札の公募が締め切られるのは来年六月になるという。今年六月十日が締切日だった八峰町・能代市沖の案件は丸一年遅れ、早期運転開始の掛け声は失笑噴飯だが、制度化のテンポは遅い印象を受ける。前出の電力関係者が続けた。
「見直し案は参議院選挙向けの“見せ球”だろ。官邸は選挙までは菅さんの歓心を買う必要がある」
なるほど、首相・岸田文雄、岸田と一線を画す安倍、菅の三人が微妙な関係にあることは周知の通り。とりわけ菅は首相を退いたあとも公明党と太いパイプを維持しており、岸田が同党と参院選勝利に向けた選挙協力を推進するには菅の意向を無視できない事情がある。問題は勝ち方だ。岸田が圧勝すれば、参院選後の内閣改造も一定のフリーハンドを得られるだろう。
昨年十月の岸田政権発足の際、経産相には山際大志郎の抜擢が有力視されていた。そこへ安倍が側近の萩生田を押し込み、山際は経済再生担当相へ回った経緯がある。果たして当初の人事は復活するのか―。洋上風力入札のルール改悪には、経産省内にも批判の声はある。が、安倍、菅を後ろ楯とする大臣・萩生田の去就が明らかでない以上、それは大きな声にはならない。事態は岸田の参院選圧勝にかかっており、その暁には十二月に最終決定する新基準は別の内容になっている可能性は高い。
いや、それでも価格競争の形骸化は続く。東電HD、JERA、住商でさえ、安値落札を防ぐ最高評価点価格の導入を支持しているのだ。こんな声が聞こえる。
「“三菱商事ショック”が続く限り洋上風力はペイせず、三〇年一千万キロワットの目標は覚束ない」
太陽光FITの“二の舞い”に
「特定卸供給」―。三菱商事の圧倒的な安値を論じるとき、しばしば話題になるのがこのビジネスモデルだ。ひと言でいうと、再エネの環境価値の販売である。
CO2フリー電力である洋上風力には、電気価値と環境価値が内在しており、物理的な前者は固定価格買い取り制度(FIT)に基づき、電力系統へ二十年間売電される。一方、後者は洋上風力の希少性の価値であり、それを求める需要家へ相対取引で販売することを特定卸供給という。需要家は例えば飲料メーカーなら、「このビールは秋田沖の洋上風力電力で製造されています」と消費者へ訴求できるメリットがある。その対価を、洋上風力事業者は売電以外のプレミアム収入として得るのだ。
もっとも、特定卸供給の将来の収入が三菱商事の安値落札の原資になっているわけではない。が、同社はNTTグループ、キリンホールディングス、米アマゾンと販売契約を結んでおり、新たなビジネスモデルを想定したことに先見性があった。とりわけ多くのデータセンターを抱えるNTTグループは、自らの脱炭素のために洋上風力の電力と環境価値を必要としている。それは、官邸が主導する「デジタル田園都市国家構想」とも合致するのだ。しかし……。
「価格競争が働かない洋上風力は、太陽光FITの二の舞いになるだろう。官製談合はわが国のデジタル社会を高コスト化する」
ある再エネ関係者は、一二年当時の民主党・菅直人政権の愚策を指摘する。太陽光発電の投資を促す名目でFIT価格を四十二円の高値に設定した結果、中国産の太陽光パネルが大挙して押し寄せ、シャープ、京セラは撤退、年三兆円の国民負担の一部も中国へ流れた。洋上風力はすでに国産風車がない現在、欧米メーカーの製造拠点誘致が焦点だが、制度リスクがあるわが国では大規模化は難しい。
脱炭素もデジタル化も進まないかつての経済大国、それが将来の日本の姿である。(敬称略)
「いろいろな(落札者の)仕組みを見てみたかった」
一月七日、経済産業相・萩生田光一の年明け最初の記者会見―。振り返れば、このひと言がルール改悪の根拠になったと言っていい。萩生田は、三菱商事を主体とする企業連合が独占した洋上風力発電の三海域の入札結果に“遺憾”の意を表明したのだ。さらに「他の事業者も参加しやすい仕組みを検討したい」と口を滑らせた。予兆はあった。
“三菱商事ショック”―。昨年十二月二十四日に発表された入札結果は、こう慨嘆されるほど衝撃的だった。同社の落札価格は一キロワット時当たり十一・九九~十六・四九円と他社の追随を許さない安値であり、失注した日本風力開発、レノバなどの風力ベンチャーは「ダンピング応札だ!」と三菱商事批判の気炎を上げていた。彼らが頼ったのは前首相の菅義偉、二〇五〇年に向けたカーボンニュートラルの宣言者である。
「おかしいんじゃねぇか」
菅は、入札結果の報告にきた経産省の資源エネルギー庁長官・保坂伸の説明に納得せず、長時間にわたり非難の〝雪隠詰め〟に遭わせている。その菅が官房長官だった安倍晋三政権時代、副長官として仕え、信任が厚かった萩生田が入札結果を歓迎するわけがない。
経産省は三月、国土交通省と連携し、入札の審査基準を見直す有識者会議を立ち上げた。慌ただしく五月二十三日にまとまった見直し案は、あからさまな三菱商事外し、すなわち価格競争の形骸化である。しかも、経産・国交の両省は審査基準の見直しを理由に、公募中だった秋田県八峰町・能代市沖の案件の入札を延期したのだ。
萩生田の不用意発言に端を発するこうした事態は、欧米の風力発電事業者や風車メーカーにどう映るか―。制度リスクの高い日本市場を嫌気されるどころか、風況や海底地盤の調査費の損害を訴え、国家賠償訴訟を起こされても不思議はない。しかし、ある電力関係者はこう囁く。
「すべては七月の参議院選挙にかかっている。その結果次第でまさしく風向きは変わるだろう」
酒とカネのばら撒き合戦に
では、審査基準の見直し案はどこが改悪なのか、子細にみていこう。論点は審査の配点に関わる①運転開始の迅速性、②最高評価点価格の導入、さらに③同一事業者による落札海域の制限に大別されるが、当初、見直しの契機となったのは運転開始の時期だった。
「三菱商事の落札案件は二〇三〇年に間に合うのか」
河野太郎、小泉進次郎、柴山昌彦ら、菅に連なる自民党の環境派議員はこう鼻白んでいた。
再生可能エネルギーの切り札と期待される洋上風力は、三〇年までに一千万キロワット、四〇年には三千万~四千五百万キロワットの導入目標が掲げられている。その第一弾である三海域の入札を三菱商事が独占したため、運転開始の遅延の怖れを指摘されたのだ。計画では三海域とも三〇年末までに稼働するが、三菱商事に敗れた応札者の中には二七年の稼働計画もあったことから、「政府目標に資する早期運転開始を重視すべ
きだ」という声が高まった。
この結果、運転開始の迅速性には二十点が重点配点される。審査は迅速性を含む「事業実現性」と「応札価格」、ふたつの評価をそれぞれ百二十満点とし、合計の獲得点数で落札を競わせているが、迅速性の比重が高まれば、いち早く地元対策に着手した者が有利になる。一方、応札価格の評価には最高評価点価格が導入される。これは事実上の応札の下限価格だ。
例えば最高評価点価格を一キロワット時当たり十五円と設定したとしよう。それより安い札を入れた者には一律に百二十満点が評価され、仮に八円、十円、十二円と応札価格に優劣があっても獲得点数は変わらない。つまり、価格競争は下限価格で無効にされてしまうのだ。さらに落札者には最大百万キロワットの制限もつく。落札した案件の発電出力がこれを超えた場合、その事業者は他の海域に応札できない。
見直し案は、風力ベンチャー優遇と受け止められても仕方ないだろう。なぜなら、第二弾の入札の有望海域である八峰町・能代市沖では日本風力開発、同じく千葉県いすみ市沖ではレノバが先行しているからだ。価格競争力に勝る三菱商事を最高評価点価格や落札海域制限で排除できれば、彼らの落札が視野に入ってくる。
さすがに運転開始の迅速性の重点配点には、東京電力ホールディングス(HD)、同社と中部電力の燃料・火力発電会社であるJERA、住友商事が異議を唱えた。
「今後、ボーリング調査の先陣争いが始まるだろう。その同意を得るため、地元に酒(接待)とカネ(地域振興)を多くバラ撒いた者が勝つことになる」
第二弾、第三弾の入札は漁協や自治体に事業者が入り乱れる混戦が必至だが、しかし、それは経産省が推進するセントラル方式に逆行するのだ。
参院選で菅の協力を得るため
セントラル方式とは、国が風況や海底地盤の調査を行い、電力系統の連系も確保し、それらのデータを応札者へ提供する事前調整を指す。同方式が普及する欧州では国がワンストップで地元と交渉するため、応札者は風車建設の効率化に専念できる。しかし、運転開始の迅速性を競うことになれば、抜け駆けの地元対策が横行し、入札が利権化するのは自明だ。
三菱商事外しとみられる落札海域制限も機能するとは思えない。同社は中電の子会社と企業連合を組んでいるが、仮に八峰町・能代市沖の案件を落札した場合、中電の関係会社であるJERAまで他の海域の応札を禁じられるのか―。そんな過剰規制はあり得ず、おそらくJERAは制限の対象外だろう。ならば、三菱商事も千代田化工建設や三菱商事エネルギーなど他の関係会社を主体に企業連合を組めばよく、いくらでも応札の余地はある。
つまり、審査基準の見直し案は制度設計の矛盾や杜撰さが目立つのだ。しかも、慌ただしく作業を進めた割に原案が固まるのは九月。パブリックコメントを経て、新基準が最終決定されるのは十二月であり、それに基づく第二弾の入札の公募が締め切られるのは来年六月になるという。今年六月十日が締切日だった八峰町・能代市沖の案件は丸一年遅れ、早期運転開始の掛け声は失笑噴飯だが、制度化のテンポは遅い印象を受ける。前出の電力関係者が続けた。
「見直し案は参議院選挙向けの“見せ球”だろ。官邸は選挙までは菅さんの歓心を買う必要がある」
なるほど、首相・岸田文雄、岸田と一線を画す安倍、菅の三人が微妙な関係にあることは周知の通り。とりわけ菅は首相を退いたあとも公明党と太いパイプを維持しており、岸田が同党と参院選勝利に向けた選挙協力を推進するには菅の意向を無視できない事情がある。問題は勝ち方だ。岸田が圧勝すれば、参院選後の内閣改造も一定のフリーハンドを得られるだろう。
昨年十月の岸田政権発足の際、経産相には山際大志郎の抜擢が有力視されていた。そこへ安倍が側近の萩生田を押し込み、山際は経済再生担当相へ回った経緯がある。果たして当初の人事は復活するのか―。洋上風力入札のルール改悪には、経産省内にも批判の声はある。が、安倍、菅を後ろ楯とする大臣・萩生田の去就が明らかでない以上、それは大きな声にはならない。事態は岸田の参院選圧勝にかかっており、その暁には十二月に最終決定する新基準は別の内容になっている可能性は高い。
いや、それでも価格競争の形骸化は続く。東電HD、JERA、住商でさえ、安値落札を防ぐ最高評価点価格の導入を支持しているのだ。こんな声が聞こえる。
「“三菱商事ショック”が続く限り洋上風力はペイせず、三〇年一千万キロワットの目標は覚束ない」
太陽光FITの“二の舞い”に
「特定卸供給」―。三菱商事の圧倒的な安値を論じるとき、しばしば話題になるのがこのビジネスモデルだ。ひと言でいうと、再エネの環境価値の販売である。
CO2フリー電力である洋上風力には、電気価値と環境価値が内在しており、物理的な前者は固定価格買い取り制度(FIT)に基づき、電力系統へ二十年間売電される。一方、後者は洋上風力の希少性の価値であり、それを求める需要家へ相対取引で販売することを特定卸供給という。需要家は例えば飲料メーカーなら、「このビールは秋田沖の洋上風力電力で製造されています」と消費者へ訴求できるメリットがある。その対価を、洋上風力事業者は売電以外のプレミアム収入として得るのだ。
もっとも、特定卸供給の将来の収入が三菱商事の安値落札の原資になっているわけではない。が、同社はNTTグループ、キリンホールディングス、米アマゾンと販売契約を結んでおり、新たなビジネスモデルを想定したことに先見性があった。とりわけ多くのデータセンターを抱えるNTTグループは、自らの脱炭素のために洋上風力の電力と環境価値を必要としている。それは、官邸が主導する「デジタル田園都市国家構想」とも合致するのだ。しかし……。
「価格競争が働かない洋上風力は、太陽光FITの二の舞いになるだろう。官製談合はわが国のデジタル社会を高コスト化する」
ある再エネ関係者は、一二年当時の民主党・菅直人政権の愚策を指摘する。太陽光発電の投資を促す名目でFIT価格を四十二円の高値に設定した結果、中国産の太陽光パネルが大挙して押し寄せ、シャープ、京セラは撤退、年三兆円の国民負担の一部も中国へ流れた。洋上風力はすでに国産風車がない現在、欧米メーカーの製造拠点誘致が焦点だが、制度リスクがあるわが国では大規模化は難しい。
脱炭素もデジタル化も進まないかつての経済大国、それが将来の日本の姿である。(敬称略)
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