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社会・文化

「地下シェルター」がない日本

物騒なご時世でも進まぬ議論

2022年7月号

「また、有事に備えた国民保護施策を推進する」
 政府が六月七日、来年度予算編成に向けて発表した「骨太の方針  二〇二二」第三章のうち「国民生活の安全・安心」の項に、昨年はなかった一文が、前後の脈絡と無縁なことを示す「また、」という接続詞とともに、ひっそりと付け加えられた。もちろん、この一文に注目した新聞・テレビはどこもない。
「これでようやく、『国民保護』に再び日が当たる」と語るのは、自民党の有力国防族議員だ。
 ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ侵略を機に核の脅しを公然とし始め、北朝鮮の核開発が実戦配備レベルに達した今、日本への核ミサイル攻撃は、俄然、現実味を帯びてきた。自民党内には、国防族議員を中心に敵基地攻撃能力保持と同時に、長らく放置されてきた「国民保護」施策を充実させるべきとの意見が高まり、首相官邸も認めざるを得なかったのだ。
「骨なし」と揶揄されて久しくなった政府の「骨太方針」だが、この文書に載らなかった各省庁の新規事業案は、概算要求を待たずして消える運命にある。
 逆にいえば「国民保護施策」という単語が、「骨太・・・