皇室の風 第167話
天皇家の執事Ⅴ
岩井 克己
2022年7月号
病床の渡邉允元侍従長は、今後の「皇室外交」の行方を案じる言葉を口にしていた。
「令和の最初の国賓がトランプ米大統領。最初の外国訪問が英国。トランプさんは官邸の強い意向だったが、英国は御本人方のご希望だそうだね。そういうことでいいのかなあ……」
華やかだからとか、留学の思い出の地で懐かしいから、といった外連味のある「演出」や思惑よりも、巧まざる自然体の出会いの積み重ねこそ皇室は大切にしてほしいと言いたかったようだ。
二〇〇九年、一〇年、一四年と重ねたインタビューでは、外国親善であろうが国内公務であろうが、人々と直に接し心通わせる「実践」の積み重ねあってこそ魂が入るという「平成」の裏方の思いが通奏低音を為していたように思われる。
◇
渡邉:おっしゃるように長く外国に行っていらしたし、向こうの王室も長く続くから、結果として向こうの王室と交流が深まる。大統領はすぐに変わってしまうから難しい。ただ例えばこんな話もある。
皇太子時代の一九六二年に東南アジアにいらした・・・
「令和の最初の国賓がトランプ米大統領。最初の外国訪問が英国。トランプさんは官邸の強い意向だったが、英国は御本人方のご希望だそうだね。そういうことでいいのかなあ……」
華やかだからとか、留学の思い出の地で懐かしいから、といった外連味のある「演出」や思惑よりも、巧まざる自然体の出会いの積み重ねこそ皇室は大切にしてほしいと言いたかったようだ。
二〇〇九年、一〇年、一四年と重ねたインタビューでは、外国親善であろうが国内公務であろうが、人々と直に接し心通わせる「実践」の積み重ねあってこそ魂が入るという「平成」の裏方の思いが通奏低音を為していたように思われる。
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渡邉:おっしゃるように長く外国に行っていらしたし、向こうの王室も長く続くから、結果として向こうの王室と交流が深まる。大統領はすぐに変わってしまうから難しい。ただ例えばこんな話もある。
皇太子時代の一九六二年に東南アジアにいらした・・・