日本の科学アラカルト 143
実現に向けた地道な歩み 夢のエネルギー「核融合」研究
2022年7月号
日本の電力逼迫をただちに解消する魔法はない。しかし科学の世界では将来のエネルギー事情を一変させうる研究が進められている。
核融合―。既存の原子炉内で起きている核分裂とはまったく異なる反応だ。我々はすでに核融合エネルギーの恩恵に与っている。地球にエネルギーを与え続ける太陽では、水素が高速で衝突しヘリウムができる反応の過程で膨大なエネルギーを生み出している。
実際に地球上で反応を起こすためには、水素ではなく水素原子の原子核に陽子と中性子を一個ずつ持つ「重水素(デューテリウム・D)」と、さらにもうひとつの中性子を持つ「三重水素(トリチウム・T)」を使う。両者を高速で衝突させると、ヘリウムの原子核と放射線の一種である中性子線が生まれる(左頁模式図参照)。これをD-T反応と呼ぶが、この前後で比較するとわずかながら質量欠損が生じる。この分が熱エネルギーとして放出される。アインシュタインの有名な「E=mc²」という公式。cは光の速さで、秒速約三億メートルという巨大な数字だ。これに照らせばわかるとおり、ほんのわずかな質量(m)の欠損でも膨大なエネルギーが生じる。{b・・・
核融合―。既存の原子炉内で起きている核分裂とはまったく異なる反応だ。我々はすでに核融合エネルギーの恩恵に与っている。地球にエネルギーを与え続ける太陽では、水素が高速で衝突しヘリウムができる反応の過程で膨大なエネルギーを生み出している。
実際に地球上で反応を起こすためには、水素ではなく水素原子の原子核に陽子と中性子を一個ずつ持つ「重水素(デューテリウム・D)」と、さらにもうひとつの中性子を持つ「三重水素(トリチウム・T)」を使う。両者を高速で衝突させると、ヘリウムの原子核と放射線の一種である中性子線が生まれる(左頁模式図参照)。これをD-T反応と呼ぶが、この前後で比較するとわずかながら質量欠損が生じる。この分が熱エネルギーとして放出される。アインシュタインの有名な「E=mc²」という公式。cは光の速さで、秒速約三億メートルという巨大な数字だ。これに照らせばわかるとおり、ほんのわずかな質量(m)の欠損でも膨大なエネルギーが生じる。{b・・・