今年の株主総会シーズンも盛況のうちに幕を閉じた。過去最高件数の株主提案が出されるなど、多くの総会で会社と株主が対立する構図がみられた。そんな中、密かに話題を集めたのが総会の招集通知で開示する企業が急増した「スキルマトリックス」だ。取締役の持つ「スキル」を一覧表にしたものだが、お手盛り、“虚偽記載”が溢れ、図らずも企業の体質を露呈している。
　トヨタ自動車の招集通知二十ページには選任予定の取締役のスキルマトリックスが掲載されているが、豊田章男社長だけ十項目すべてに資質を充たすマルがついている。「まさにパーフェクトヒューマン。完全無欠の豊田章男がいるのだから、うちの会社も安泰ですね」。社員は自嘲気味に話す。
　三井住友信託銀行が五月中に招集通知を開示したプライム上場企業を調べたところ、九割以上がスキルマトリックスを載せていたという。ここ数年で一気に普及しつつある。海外で先行して広まったが、昨年六月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード（企業統治指針）で開示が促された。
　能力としてどんな項目を開示するかは企業に任されている。一般的・・・