『朝日新聞政治部』が示した暗黒
《政界スキャン》
2022年7月号
岸田文雄首相の前の宏池会政権は、三十年前の宮澤喜一元首相までさかのぼる。この人は政界屈指の知性派で一目置かれた半面、エリート臭が鼻持ちならず嫌われた。何しろ平然と嫌みを口にする。悪名高い語録の一つに「靴は黒、大学は東大、新聞は朝日でしょう」というのがあった。茶色い靴を見ると「あなた赤い靴をお履きになるんですな」とつぶやく。宮澤氏に「あなた大学はどちら」と尋ねられたら、答えは東大の法科か経済の二択しかない。語録は、これぞ日本の正統派エリートの典型を宮澤流に列挙したものだが、その中に何と朝日新聞が入っていた。そのひいき目は筋金入りで、リクルート疑獄で蔵相を辞めた時なぞ「辞意を固めたのは今朝。朝日の一面スクープを見て初めて、ああ自分は辞めるんだと教えられた」と語ったほどだ。
宮澤氏の場合は極端にしても、今世紀初めまで永田町には「新聞は朝日、テレビはNHK、通信社は共同」という伝承があった。政治家が政局を動かし、流れを作るため意図的に情報を流す先として、この三メディアが別格とみなされていた実態を指す。共同通信が重視されたのは、全国紙より総部数が多い地方紙に配信しているからだ。卑屈・・・
宮澤氏の場合は極端にしても、今世紀初めまで永田町には「新聞は朝日、テレビはNHK、通信社は共同」という伝承があった。政治家が政局を動かし、流れを作るため意図的に情報を流す先として、この三メディアが別格とみなされていた実態を指す。共同通信が重視されたのは、全国紙より総部数が多い地方紙に配信しているからだ。卑屈・・・