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中国経済が罹患する「日本病」

類似する「長期衰退」への歩み

2022年7月号

「現状の不振は循環的か、構造的か」。中国経済への認識をめぐる議論が共産党中央で再燃しているという。三月から三カ月続く小売り売上高の落ち込みは上海、北京などの都市封鎖の徹底による「一時的現象」と解釈する声が強いが、鉱工業生産の停滞については「生産の海外移転」という構造的要素が主因という意見が党内で高まっている。習近平総書記側近ですら失業の増大への懸念を強調し始めており、秋の党大会に向け火種は拡散しつつある。こうした議論の中で、党内外で広がっているのは高成長後の長期衰退モデル「日本病」への警戒である。
 中国の小売り売上高は三月に前年同月比三・五%のマイナスに転落、四月には一一・一%減、五月も六・七%減と不振が続いている。鉱工業生産は四月のマイナス二・九%から五月は市場の予想を裏切って、〇・七%増と持ち直した。ただ、自動車産業の四・八%減、電子機器六%減など主要産業は軒並みマイナスで、上向いたのは政府がてこ入れした鉄鋼、セメントなどインフラ建設関係のみだ。
 都市ロックダウンやロシアによるウクライナ侵攻が加速させた世界的なインフレなど中国経済への表面的な下方圧力は強いが・・・