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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》医学部地域枠制度

医師「奴隷奉公」のからくり

2022年6月号

 入り込んだら最後、入る前には気付かなかった仕掛けの数々で抜け出せない。迷宮、別世界、収容所、孤島……。小説や映画ならストーリーを盛り上げるうえで定番の設定が、現実の医師の世界で、公権力を「黒幕」に常態化している。医学生や若手医師を対象とした医学部地域枠制度のことだ。
 二〇〇八年度入試から導入された地域枠制度は、医師不足や診療科の偏在が見られる地域での大学医学部入学者の選抜方法で、卒業後は特定の地域で診療を行うことを条件に、通常の入学者とは別枠で実施される。
 一八年の医療法・医師法改正で都道府県の権限を強化し、医学部定員に地元出身者の枠を設けられるようにもなった。いずれも厚生労働省が主導した政策だ。二一年度入試では医学部定員九千三百五十七人中、地域枠は一八%、一千七百二十四人を占めた。
 都市部に人口が集中し、少子高齢化による人口減を前に、地方の医療体制の確保と維持は喫緊の重要課題だ。メディアも「医師不足の地域どうする/医学部の『地元枠』拡大を」(一八年四月二十一日付毎日新聞朝刊の社説)といった論調が目立つ。
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