《企業研究》NTT
澤田院政「再統合」への野望
2022年6月号
NTT(持ち株会社)から聞こえた慚悔の声は、相談役・鵜浦博夫のこのひと言だけである。
「谷脇には気の毒やった……」
昨年三月、わずか一年三カ月前のことだ。社長の澤田純、前社長の鵜浦らNTT首脳が、グループの“迎賓館”と呼ばれた会員制レストラン「KNOX」(東京・麻布十番)で、総務省の政務三役や次官級幹部に高額の接待をしていたことが週刊誌の報道で発覚。連日、国会で追及される不祥事となった。旧郵政省出身の総務省や首相官邸の幹部は軒並み更迭・退官を余儀なくされたが、その中でも、とりわけ才幹を惜しまれたのが谷脇康彦―。当時の総務審議官である。
通信事業を知悉する谷脇は、NTTの分離分割、移動体通信の競争政策などに実績を上げ、内閣サイバーセキュリティセンターの副センター長も務めた旧郵政官僚の異能のエースだった。当時の首相・菅義偉の信任も厚かったが、事務次官目前で無念の涙を呑んだ。
さすがに鵜浦は負い目を感じたのだろう。しばしば自責の念を吐・・・