化学界「研究不正」続発の暗澹
学者を狂わす「カネ」と成果主義
2022年6月号
五月十一日、科学技術振興機構(JST)がサイト上で動画を公開した。「倫理の空白 理工学研究室編」と題された一時間ほどのドラマ仕立ての内容だ。架空の研究室での不正疑惑を巡るストーリーが展開される。JSTは動画を「日々の研究活動で求められる倫理意識をより高めることを目的」(サイトより)に公開したという。
関東の大学で有機化学の研究に携わる大学教員の一人はこう警鐘を鳴らす。
「日本の研究者のモラルは崩壊寸前だと認識すべきだ。特に化学分野で深刻な問題が相次いでいる」
二つの研究不正の「共通点」
四月二十九日、北海道大学が過去の論文について取り下げを発表した。対象となったのは、北大「化学反応創成研究拠点(ICReDD)」の澤村正也教授らの研究グループによるもの。二〇二〇年八月に米科学誌「サイエンス」に掲載された「C-H不斉ホウ素化反応」に関する研究論文である。
有機化学の材料はほとんどが石油由来の物質だ。世界中で、バイオマス(生物)由来の材料を活用できないかという研究が進められてい・・・
関東の大学で有機化学の研究に携わる大学教員の一人はこう警鐘を鳴らす。
「日本の研究者のモラルは崩壊寸前だと認識すべきだ。特に化学分野で深刻な問題が相次いでいる」
二つの研究不正の「共通点」
四月二十九日、北海道大学が過去の論文について取り下げを発表した。対象となったのは、北大「化学反応創成研究拠点(ICReDD)」の澤村正也教授らの研究グループによるもの。二〇二〇年八月に米科学誌「サイエンス」に掲載された「C-H不斉ホウ素化反応」に関する研究論文である。
有機化学の材料はほとんどが石油由来の物質だ。世界中で、バイオマス(生物)由来の材料を活用できないかという研究が進められてい・・・