「四人がアウト、あと六人」
　米共和党の支持者で、この数字が分からなければ、もぐりである。
　二〇二一年一月十三日、任期切れが迫ったドナルド・トランプ大統領（当時）に対する弾劾訴追決議案が、米下院で可決された。トランプにとっては、二度目の弾劾という屈辱だ。共和党の十人が民主党とともに賛成票を投じた。
　この後、トランプの復讐が始まった。「全員を政界から追放しろ」と言う指令に、各選挙区にいる支持者が応じた。トランプ支持の極右活動家らも同調し、十人への嫌がらせが行われた。一人、また一人と「再選断念」に追い込まれた。今年四月、四人目の議員が十一月の中間選挙に「出馬しない」と表明した。これで残りは六人だ。
　この異様な空気の中で、トランプ派が「最大の標的」とするのがチェイニーである。名前が示す通り、ディック・チェイニー元副大統領の長女だ。中学時代から父親の選挙運動を手伝い、大学の卒業論文は「大統領の戦争権限の進化」というもの。早くから政治を志した。国務省や法律事務所、国際機関で勤務の後、〇二年に中東担当の国務次官補代理に任命された。
　ジョージ・・・