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経済

コロナ医薬品開発「国産全滅」の裏側

血税はどこに消えたのか

2022年5月号

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)について、米国を中心とした医薬品開発の勢いは凄まじい。新たな技術も次々と報告され、コロナ医薬品開発は日進月歩だ。一方で、わが国で承認されている国産ワクチン、治療薬は現時点では存在しない。日本政府は巻き返しに懸命だ。国産医薬品の開発を推し進め、自前で安定供給するという「安全保障」が念頭にあるためだ。しかし、その必要性が問われているうえ、歪みも見え隠れしている。
 これまで厚生労働省は「ワクチン生産体制等緊急整備事業」として一千三百七十七億円、国立の研究開発法人である日本医療研究開発機構(AMED)にはワクチン・治療薬の研究開発に七百九十億円の税金を投じている。さらに三月二十二日、AMED内にワクチン研究・開発の司令塔を担う先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が開設された。
 ただ、このような動きは、時期を逸したと言わざるを得ない。ワクチンの場合、日本政府は年内にファイザーから一億三千万回分、モデルナから九千三百万回分の供給を受ける契約を結んでおり、全国民の追加接種分は既に確保できている。海外メーカーの生産体制が整った現在、日本・・・