その日、満面に笑みを浮かべた豊田章男トヨタ自動車社長が富士スピードウェイ（静岡県小山町）に姿を現した。三月三日に同サーキットの西ゲート付近に建設していたレーシングチーム「ルーキーレーシング」ガレージの竣工式に同チーム代表として参列したのだ。「私は十歳の誕生日を富士スピードウェイで迎えた。十歳の私が感じたように子供たちの記憶に残るクルマの原体験をしてほしい」と思い入れたっぷりにあいさつした。
　式には施工した大林組の蓮輪賢治社長や設計を担当した日建設計の大松敦社長など、錚々たる顔ぶれが並んだ。ガレージは延べ床面積三千平方メートルの二階建てで「大林組の社長が静岡県の山の中まで出向く大型物件ではない」（建設業界紙記者）。もちろん、ゼネコントップが顔を出すからには、それなりの理由がある。

闇深き「裏の顔」

　竣工式から一カ月後の四月六日、トヨタ子会社の東和不動産が同二十七日に「トヨタ不動産」へ社名変更すると発表した。実は昨年、東和不動産に異変があった。同社社長に三井不動産ワークスタイル推進部長だった山村知・・・