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WORLD

欧州の「癌細胞」ハンガリー

プーチンと結託するEU加盟国

2022年5月号

ウクライナ戦争におけるロシアの蛮行に義憤を燃やす欧州で、そこだけ異様な別世界を築く国がある。政権による強力なメディア支配のもと、親ロシアの言説が広がる東欧ハンガリーだ。この国を率いるオルバン首相はロシアのウクライナ侵攻後もプーチン露大統領との蜜月関係を維持し、ウクライナのゼレンスキー大統領を公然と敵視する。欧州連合(EU)を内部からむしばむ独裁的ポピュリストは四月三日の総選挙で圧勝し、ますます増長するばかりだ。
「我々は今、強大な敵たちと戦わなければいけない」。首相の四期目続投を決めた総選挙の勝利演説でオルバン氏はそう訴えた。「敵」として名指ししたのは、EUの高級官僚や西欧や米国のメディア、そしてゼレンスキー氏だった。
 オルバン政権はその強権統治を巡りEUと対立する一方、プーチン氏との緊密な関係で知られてきた。ウクライナ侵攻後も、ロシアを糾弾するほかの欧州各国には背を向け、「中立」を宣言する。ゼレンスキー氏から軍事支援への参加を迫られた際には、「ゼレンスキー氏が代弁するのはあくまでウクライナの国益に過ぎない」(オルバン氏の報道官)と冷たくはねのけた。
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