三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

皇室の風 第164話

天皇家の執事Ⅱ
岩井 克己

2022年4月号

 平成の天皇・皇后(現上皇夫妻)の公式外国訪問は十九回二十八カ国、皇太子夫妻時代も含めると五十一カ国にのぼった。外交官出身の渡邉允元侍従長へのインタビューでは、勢い海外随行の思い出話に花が咲いた。昭和の時代には想定されなかった公的活動の大幅拡大。憲法上の議論も呼ぶ微妙な領域で「平成」の外国交際を現場でどう見たか。二〇〇九年初めの録音テープから再現する。

       ◇

岩井:平成の両陛下は外国の王室や一般市民ら多くの人々と接した足跡が際立っています。ただ報道や記録は儀礼的なものや表立ったものに限られがちで、すくい切れないものもあったのではないですか。思い出をうかがいたい。
渡邉:まず僕の立ち位置を順序立てて言うと、初めて海外訪問にお供したのは皇太子時代の昭和六十二(一九八七)年。昭和天皇が入院中のアメリカ訪問で、当時は北米局担当の大臣官房審議官だった。皇太子の外国訪問だから儀典長がやるというよりは、地域局がやるのが通例だった。その意味では担当ではあったが、イギリスの大使をやった方(藤井宏昭北米局長か)が面白いことを言いだした。「皇・・・