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経済

KDDIの稚拙な「ベンチャー投資」

社長肝煎り事業で相次ぐ挫折

2022年4月号

 芸は身の仇―。覚えたての芸に気をとられ、本業に身が入らなくなることがある。そんな本末転倒な経営者と指摘されるのがKDDIの髙橋誠社長だ。
 経団連が三月十五日に公表した提言「スタートアップ躍進ビジョン」。七十六ページの大部にわたり「イノベーションエコシステムの強化」や「大企業はイノベーションフレンドリーに」などの言葉が並ぶ。守旧派のイメージが強い経団連がここまで振り切るのかと話題になった。提言作成に関わった経団連のスタートアップ委員会には四人の委員長がおり、そのうちの一人が髙橋氏だ。
 ネットで髙橋氏の名前を検索すると「オープンイノベーション」「起業家」「ベンチャー」といったテーマで、多くのメディアのインタビューに応えている。実際、KDDIは大企業の中で「スタートアップ連携のお手本」と称される。口さがない向きは、「経団連の提言を通じて髙橋氏が自身の成果を礼賛させているのでは」(通信業界関係者)などと噂している。

「成功事例」が見当たらない

 髙橋氏は横浜国立大学工学部を卒業後、一九八四年・・・