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経済

欲望渦巻くサハリン「ガス権益」

喪失の危機で迷走する日本

2022年4月号

「二十一世紀の世界にこんなことが起こるのか。百年前の帝国主義戦争を見ているようだ」
 ロシアのウクライナ侵攻に多くの日本人は衝撃を受け、異口同音に強い義憤を吐露している。しかし、それは平和に慣れた日本人の国家に対する“侮り”、その裏返しの感情にほかならない。
 侮りとは、冷戦終結後、強欲資本主義の下で進んだ経済のグローバル化、同じく欲望が生んだITの際限のない拡散、この“マネーと情報”によって世界は均一化され、国家は溶解していくという歴史観である。一九九一年のソ連崩壊当時、民主主義と市場経済の最終的な勝利を謳う「歴史の終わり」が盛んに喧伝されていた。
 しかし、十七世紀のウェストファリア条約以来、営々と築かれた国民国家の枠組みはそう簡単に揺るがない。国家が一旦追い詰められれば、むき出しの暴力が世界を蔽うことをロシアは実証したと言える。理念ではなく、今なお国益に左右される冷厳な世界に日本はどう対峙すべきか……。
「ジェノサイド(大量虐殺)を繰り返す国の案件については、商社も・・・