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ブラジルを呑み込む「監獄マフィア」

世界展開する「犯罪株式会社」の脅威

2022年4月号

 南米ブラジルで、従来の麻薬カルテルとは全く違った犯罪組織「首都第一コマンド(PCC)」が勢力を伸ばしている。組織のボスをはじめとして主要幹部はほとんど収監されているのに、刑務所から発する命令で、組織はどんどん広がっていった。
 特に過去数年の伸長ぶりが著しく、活動は南米全域に広がり、イタリアのマフィアや中東のイスラム原理主義組織とも繋がりがある。組織間の抗争に明け暮れるメキシコの麻薬カルテルとは異なり、「地球的規模の犯罪組織になる」との懸念も強まっている。

刑務所が司令部

 サッカー大国ブラジルでは、どの刑務所にもグラウンドがある。
 一九九三年、サンパウロ州内にある刑務所で、収監者対抗戦が行われ、サンパウロ市出身の八人の収監者が自分たちのチームに「首都第一コマンド」という名前を付けた。これがPCCの始まりだ。サンパウロ州の州都サンパウロ市出身者という意味で、ブラジルの首都ブラジリアではない。
 八人はやがて、収監者の指導層となり、「収監者は兄弟(イルマァオ)だ。兄弟は兄弟を殺・・・