ウラジーミル・プーチン露大統領が追い込まれている。電撃作戦でウクライナの首都キエフの心臓部を数日中に抑え、ボロジミル・ゼレンスキー大統領の政権を打倒する計画は、完全に崩壊した。
　今や遠距離からのミサイル乱射による民間人殺害という戦争犯罪を重ね、ウクライナ政府と国民の心が折れるのを待つしかない。
　ロシア軍の犠牲が異常に高いという証拠も積み重なっている。プーチン大統領は、自身が最も恐れる民心離反を考慮しながら、幕引きを探らざるを得ない。

「あんたの息子は何をしている」

　ロシア軍の状況を示す事件は、三月上旬に起きた。
　ウクライナの戦場からざっと四千キロメートル離れた、ロシア中部のケメロボ州ノボクズネツクという都市で、地元の集まりがあった。同州のセルゲイ・ツィビリョフ知事が立って挨拶を始めると、「私たちは騙された」「嘘つき」という声が上がった。
　知事が言葉を止めると、ある女性が「あんたの息子さんは何をしているのさ？」と大声で叫んだ。
「息子は大学で学んでい・・・