石原慎太郎なる「幻影」
作家も政治家も「二流の人」
2022年3月号
二月一日死去した石原慎太郎の新聞各紙回顧記事は、十三年半務めた東京都知事時代を元都職員や都議らが口々にほめそやす異様な作りだった。例えば在任中は批判的だった毎日新聞。「裏表がない正直な人柄」「ぶれない信念と実行力」「物事を恐れないチャレンジ精神」「好奇心旺盛で少年のような面もある魅力的な人」「言葉を磨き議論を戦わせた」「これほど職員に好かれた知事はいない」「今の豊かな東京は石原都政のおかげ」……。死者にむち打たないのが作法とはいえ、これでは実像とかけ離れすぎである。
政治家・石原慎太郎とは何者だったか。作家との二足のわらじを履いていたため生前、政治家としての暴言・不作法・失敗は「作家だから」でウヤムヤにし、作家としての低評価は「政治家になったせい」と言い訳したが、「どちらも二流の人」だった実相と向き合う時が来た。二つの仮面を都合よく付け替えてきたことに、ごまかされない。華麗な人脈と常に話題を振りまく演出をはぎ取る。そうして純粋に一政治家としての実力を評価し「慎太郎なる幻影」に気づけば、そこに戦後政治の一断面と特質が浮かび上がるに違いない。{br・・・
政治家・石原慎太郎とは何者だったか。作家との二足のわらじを履いていたため生前、政治家としての暴言・不作法・失敗は「作家だから」でウヤムヤにし、作家としての低評価は「政治家になったせい」と言い訳したが、「どちらも二流の人」だった実相と向き合う時が来た。二つの仮面を都合よく付け替えてきたことに、ごまかされない。華麗な人脈と常に話題を振りまく演出をはぎ取る。そうして純粋に一政治家としての実力を評価し「慎太郎なる幻影」に気づけば、そこに戦後政治の一断面と特質が浮かび上がるに違いない。{br・・・