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経済

《地方金融の研究》石巻信用金庫

被災地に迫る「多重債務問題」

2022年3月号

 今年もまた「鎮魂」の時がやって来る。
 東日本大震災―。二〇一一年三月十一日、東北地方や北関東沿岸を巨大地震と大津波が襲った。死者・行方不明者一・八万人超(震災関連死を除く)。全壊や流出家屋約十二・一万戸。すべての電源を失った東京電力福島第一原子力発電所では原子炉が次々とメルトダウン。放射能をまき散らし、当時の政権は一時「東日本壊滅」といった最悪の事態さえ覚悟したとされる。
 そんな地震で甚大な被害を受けた自治体の一つが宮城県石巻市だ。死者・行方不明者は昨年十月末までの判明分だけで三千六百九十四人(同)。震災前に八千九百七十あった事業所数は直後の一二年には五千二百十八と一気に約六割の水準に減少した。市の人口は社会インフラなどの復旧・復興が進み、震災から十年以上の時を経た今もなお戻らない。震災直前の一一年二月末に十六万二千八百二十二人だった人口は昨年三月末時点で十三万八千七百十人。何らかの形で二・四万人余りが“消えた”ことになる。
 その石巻市を最大の地盤とする石巻信用金庫が、ここにきて被災地で浮上しつつある新たな課題に頭を抱えてい・・・