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社会・文化

「肥満」対策の最新研究

「薬物治療」が世界の主流に

2022年2月号

 世界各地では、肥満治療を科学的に議論し、多くの臨床研究の結果が報告されている。有効な薬物治療の開発も進む。「肥満対策の世界で革命が進んでいる」との医療関係者の声も聞かれる。
 今年一月十五日、中国・四川大学の研究チームは、英『ランセット』誌に、肥満成人に対する過去の百四十三の臨床研究をまとめた。この論文の中で、有効な薬剤として取り上げられたのが「GLP-1受容体作動薬」だ。
 血糖値を下げるインスリン分泌を促進し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制するため、糖尿病治療薬として用いられる。デンマークのノボノルディスク ファーマ(以下、ノボ社)が開発したセマグルチド(一般名・オゼンピック)はその一つで、わが国でも既に市販されている。
 セマグルチドは糖尿病治療薬として、膨大な使用経験があり、長期的安全性は確立している。この薬には、多くの医学的な裏付けがある。GLP-1受容体作動薬は中枢神経に作用し空腹感を軽減するとともに、胃のうごめきを抑制し、満腹感を高める。このため、GLP-1受容体作動薬を投与されている糖尿病患者では、食事量が減り、体重が減少することが・・・