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社会・文化

スパイ・ゾルゲは「凡庸」だった

機密文書公開で判明した「真相」

2022年1月号

 ロシアのプーチン政権は愛国主義発揚の一環として、戦前の東京で諜報活動を行った旧ソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲの顕彰を進め、神格化が進んでいる。スパイ出身のプーチン大統領も二〇二〇年十月、「高校生の頃、ゾルゲのようなスパイになりたかった」と告白した。在日ロシア大使館は、多磨霊園にあるゾルゲの墓の所有権を取得。訪日したロシア要人が訪れる聖地となった。ゾルゲ関係の機密文書公開が進み、関連書籍も次々に刊行されている。
 だが、ロシアで解禁された文書から、ゾルゲは決して「スーパー・スパイ」ではなく、対独戦への貢献も限定的だったことが判明した。「二十世紀最大のスパイ」という評価は、皮肉にも情報公開で揺らぎつつある。

優秀だったのは「エコノミスト」

 ゾルゲは一九三三年から逮捕される四一年十月まで八年間東京で活動したが、この間ゾルゲが軍参謀本部情報総局に送った暗号電報やモスクワからの指令など関連文書計約六百五十本が機密指定を解除され、モスクワの国防省中央公文書館などで公開されている。
 この中で興味・・・