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経済

《クローズ・アップ》中西 勝也(三菱商事次期社長)

「脱炭素」で次の成長を描けるか

2022年1月号

 座右の銘は「捲土重来」、自らを称して「負けず嫌い」と繰り返し語った。そこに、次期社長の逆境に強い自矜心がほの見える。
 三菱商事の社長に電力部門トップの常務・中西勝也の昇格が決まった。二〇二二年四月に就任し、会長に退く社長・垣内威彦は同六月の株主総会後に代表権を返上する。多くの疑心暗鬼を呼んだ交代劇だったが、蓋が開いてみればサプライズはない。同社の最大課題である「脱炭素」を推進するうえで順当な人事と言える。しかし、次期社長は昨年度、伊藤忠商事に抜かれたトップ商社の座を奪回し、維持していけるのか―。
「組織の三菱、法治の三菱が健全に機能したということだ」
 社内の一部ではこんな皮肉が囁かれる。なぜなら、垣内時代は改革と波乱の六年だったからだ。セクショナリズムを嫌う垣内は、実力主義による人事と組織の流動化を進め、ついに副社長を置かなかった。非資源事業に投資・提携を集中、今年度九千億円の純利益を目指した中期経営計画も打ち上げた。これらが「独善」「大風呂敷」と一部の反発を買ったのだ。
 次期社長も、農水産畑出身の垣内の後輩たちである元常務・京谷裕、常務・・・