新型コロナの感染拡大の影響で、物流が停滞しサプライチェーン（供給網）の混乱が続いている。原油など資源価格の高騰や円安基調と重なって、物価を押し上げ景気を下押しする恐れがある。さらにそれ以上に危険なのは、グローバルに進展しているサプライチェーンの再構築で日本が取り残されることだ。場当たり的な対応では文字通りの孤島となり、日本経済の一段の停滞を招きかねない。サプライチェーンの再構築を国家戦略として位置付ける覚悟が必要だ。

日本船の「係留拒否」

　二〇二一年のＮＨＫ大河ドラマで、日本の資本主義の父として描かれた渋沢栄一が海運業の主導権をめぐって岩崎弥太郎と激突するシーンが流れた。これは歴史上の事実であり、海運業が裏方として日本経済の屋台骨を支えてきたのは今も変わらない。
　二一年十月下旬、西オーストラリア州フリーマントル港でストライキの予告が通知され、日本の海運業界に衝撃を与えた。オーストラリア海運労組（ＭＵＡ）と港湾大手パトリックの労働協約の改定交渉がもつれ、十一月二日から二日間、同港でのコンテナ船の・・・