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政治

台湾有事に何の備えもない日本

邦人救出の計画策定さえ進まず

2022年1月号

 二〇二二年、世界はウクライナと台湾という地政学上の「二つの危機」に直面しているが、日本にとって死活的に重要なのは「台湾危機」であるのは言をまたない。
 だが、「危機」が「有事」にエスカレートした場合、憲法をはじめ法律にがんじがらめに縛られている日本政府に、打てる手立てはほとんどない。岸田文雄政権は、二一年度補正予算で七千七百三十八億円の防衛費を計上、南西諸島への自衛隊部隊の迅速な展開能力を増すためのC2輸送機の調達前倒しに加え、空対空ミサイルや魚雷、機雷などを買い増した。台湾有事を念頭に、自衛隊の継戦能力を強化する目的があるのだが、現役自衛官に言わせれば「焼け石に水で、ないよりまし」なレベル。もっと絶望的なのは、情勢が緊迫の度を増したときに在留日本人らを退避させるNEOと呼ばれる「非戦闘員退避作戦」(Non‐com
batant Evacuation Operation)策定が、まったく進んでいないのだ。
 台湾で暮らす日本人は、約一万九千人にのぼる。旅行者も多く、コロナ禍前には、毎月十五万人以上の日本人が台湾を訪れている。
 旅行者をあわせ二・・・