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マカオ「カジノ摘発」で狙う獲物

習近平の粛正は新局面へ

2022年1月号

 中国政府が、香港民主化運動の弾圧に続いて、マカオのギャンブル産業の粛正に乗り出した。
 捜査当局は十一月下旬に、太陽城集団(サンシティ・グループ・ホールディングス)の周焯華(アルビン・チャウ)最高経営責任者(CEO)を逮捕し、カジノ業界を驚かせた。もっと震え上がっているのは、マカオを資金洗浄(マネーロンダリング)に使う、中国共産党の腐敗幹部たちだろう。
 資金洗浄罪などの容疑で逮捕されたチャウは、四十七歳にして、マカオの業界の伝説的存在だった。
 正確な生い立ちはほとんど伝えられていないが、貧しい生まれから夜の世界に入り、太陽城集団をつくったとされる。
 ボディービルダーのような筋骨隆々の肉体や、マカオに本妻、マレーシアに愛人(それぞれ有名人)を持つ派手な暮らしぶりは、香港ゴシップ・メディアのお好みのネタだった。
 習近平国家主席率いる中国政府が、マカオにショックを与えるには、「チャウ逮捕」は最高の材料だ。太陽城の株価は、このニュースを受けて四八%も下落した。地元では「これでマカオの繁栄も終わりか」という悲観論も流れた。
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