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「欧州中心主義」の危うい台頭

寛容・協調から「排他・独善」に変容

2022年1月号

 欧州政治を揺るがしたポピュリズム(大衆迎合主義)は勢いを弱めている。自国第一主義を掲げたトランプ米大統領は退場し、米国との「民主主義同盟」も復活に向かう。欧州では国際協調主義の再構築に向け、機運が高まっているように見える。だが、欧州連合(EU)などの最近の動きはそれに大きな疑問を抱かせる。人権や民主主義を掲げる外交や政策を一皮むけば、排他的で覇権主義的な「欧州中心主義」が顔をのぞかせるからだ。
 ベラルーシ・ポーランド国境などで現在進行中の難民・移民問題はEUの矛盾を露呈した。
 旧ソ連ベラルーシ西部の国境には二〇二一年六月以降、EU加盟国であるポーランド、リトアニア、ラトビアへの入国を目指す中東からの難民・移民が急増した。EUは、ベラルーシのルカシェンコ政権が反政府デモ弾圧に対するEUの制裁への報復などとして、故意にイラクやシリアからの難民・移民を送り込んでいるとみる。「立場の弱い難民・移民らを道具に利用しており、非人道的だ」。EUはルカシェンコ政権を糾弾する。しかし対応策としてEUが示した提案も、人道主義とはほど遠い。

「私たちは家族」が示す狭量さ・・・