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経済

「商社で一位」何がめでたい

伊藤忠「決算と株価」への妄執

2021年12月号

 伊藤忠商事が異様なほど株価にこだわる理由は何なのか―。経営陣の発言には生臭さが漂う。
「上期は絶好調の歴史的決算。配当性向三〇%の実現へ道筋も明確にしました」  
 十一月五日、同社社長の石井敬太は今年度上期連結決算の発表に臨み、こう自信をみなぎらせた。純利益は前年同期比ほぼ倍増の五千六億円。八事業部門すべて増益を達成し、通期純利益は期初計画を二千億円上回る、実に七千五百億円と空前の水準を見込む。併せて配当も二十二円増の年百十円に修正、さらに最低十円を毎年上積みするステップアップ還元を表明した。他商社に比べ見劣りする配当性向を二〇二三年度に三〇%へ引き上げるという。  
 しかし、市場は反応しない。この日の伊藤忠の株価は終値三千二百六十六円。むしろ三%下げた。週明け八日はさすがに六百万株超の大商いとなり、三千四百円台を回復したものの、その勢いも翌日までだった。以降は好決算の発表前を下回る軟調が続いている。同社の失望は大きい。
「なぜ上がらないのか、出せるものは出し切ったのに……」  
 おそらく市場は見抜い・・・