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連載

日本の科学アラカルト 136

多分野で応用できる可能性 「接着する技術」の開発

2021年12月号

「接着」とは二つ(以上)の物体がくっつくことである。接着は、人類の文明的な営みにとって重要な意味を持つ。古今東西、人類はあらゆるものを「くっつけて」モノを作ってきた。  
 身の回りの多くのモノが、接着されることによってその形状を保持している。古くは天然のアスファルトや、コメなどを使って物体を接着してきたが、接着剤自体も大きく進化している。また、いわゆる接着剤を使わない技術の研究も多く進められている。
「接着剤がくっつく原理は不明」。ネット上などには、こんな言説が散見される。これは都市伝説の類であり、接着剤がなぜ物体同士をくっつけるのかは、すでに原理が解明されている。しかし一方で、接着剤がつくとき、もしくは剥がれてしまうときのシステムについては判明していない部分も残る。  
 剥がれるときの挙動を解明することには重要な意味がある。「なぜ剥がれたのか」がわかれば、「どうすれば剥がれないようにできるか」という次のステップに進むことができるからだ。  
 産業技術総合研究所(産総研)のナノ材料研究部門の堀内伸上級主任研究員らは、今年十一月に接着剤の剥が・・・